Fountain の 記法 を使って、日本語でも台本を書けるか検証します。
目次や奥付といった書籍化レベルのことは考えません。
以下、「プレビュー」とは VSCode の Better Fountain という拡張機能を使ったプレビューのことを指します。
行の種類を書き分けられるか、またプレビューで見やすくレンダリングされるか考察します。
Fountain では Title Page を記述することができます。
ドキュメントの先頭に key: value
というフォーマットで情報を羅列すると、それが Title Page になります。
Title: アンダーコントロール
Author: 沙汰青豆
プレビューするとページになってしまって冗長な感じがします。
日本語では公式ルールを無視して、改ページなしで表示したいところです。
key:
部分は表示されません。
登場人物リストの前に「登場人物」などと書く行のことを、私は「登場人物見出し」と呼んでいます。
Fountain にはそういう概念はないので、ローカルルールを追加する必要があるでしょう。
Section として書いておいて、Section が見出しとして出力されるようなツールを作れば良いかも知れません。
# 登場人物
Fountain では Section は、最終的なレンダリングには出力されませんが、プレビューでは薄い灰色で表示されます。
登場人物リストの各行のことを、「登場人物」と呼ぶことにします。
Fountain にはそういう概念はないので、書くなら Action と同様に「他のルールに当てはまらない行」として書くことになるかと思います。
人物名に続けて説明を書きたい場合はローカルルールが必要になります。
たとえば以下のように、人物名の後にコロンを付けても良いと思います。
# 登場人物
捨村はじめ: 保存容器会社の社員
京野ゴロー: 保存容器会社の社員
荻島らん子: 捨村たちの先輩
ただしこれを文書の先頭でやると、Title Page になってしまいます。
本文中で Character 行に短縮名を使う場合を考えて、短縮名と正式名の両方を定義できると良いです。
# 登場人物
捨村はじめ (捨村): 保存容器会社の社員
京野ゴロー (京野): 保存容器会社の社員
荻島れん子 (荻島): 捨村たちの先輩
Fountain では Scene Heading を使いますが、これを使う上で問題があります。
INT
, EXT
など英語の台本に特有の表現が必要。INT. シーン1
Fountain では ‘.’ (ドット) を行頭に書くことでその行を Scene Heading にする事もできますが、その場合、’.’ の次の字をアルファベットか数字にしなければなりません。
無理やり書くとすれば以下のような形でしょうか。
.1 シーン1
行頭の ‘.’ はプレビューでは表示されなくなります。
いずれにしても Scene Heading のプレビュー時のスタイルは Action (ト書きなどに使う、セリフでも柱でもない行) と同じなので、分かりにくいです。
階層化したい場合は、Fountain の Section が使えます。
# 第一幕
## シーン1
### 待合室
ただし上でも書いたとおり、出力されません。
また、プレビューでは表示されても、階層の深さでスタイルが変わらないので不便です。
ト書きはただ書くだけで Fountain では Action として扱われます。字下げもプレビューや出力に反映されます。
.1 シーン1
舞台中央やや奥めにデスク。左右から座れるようになっている。
英語の場合は大文字小文字を気にする必要があります (すべて大文字だと人物名と解釈されてしまう) が、日本語では気にする必要はありません。
Fountain ではセリフ行は Character と Dialogue に分かれています。
PETER
I like pizza.
大文字で書かれた行が Character ということになりますが、日本語ではそうは行かないので、もう一つのルール – ’@’ で始まる行は Character – を使います。
@ピーター
ピザが好きなんです。
Character の次の行は自動的に Dialogue になります。
Fountain のルールとして Dialogue を複数行にすることも可能で、これはそのまま使えそうです。
ところで、日本語では下のように人物名に続けて (改行せずに) セリフを書くのが一般的です。
ピーター「ピザが好きなんです」
私は個人的には Fountain のように人物名で改行してセリフを書くことにもメリットがあると思っています。
たとえばセリフを折り返す (ページ幅に達して自動で改行する) 時、エディタが勝手にきれいに字下げしてくれれば良いのですが、そうでなければセリフはセリフで行頭から書いた方が視認性が良いです。
台本の最後に「おわり」などと書く、アレです。
縦書きの場合は下寄せにする等、ト書きとはスタイルを変えたくなると思います。
Fountain には Centered Text という、「中央寄せ」を表す書き方があります。
> おわり <
日本語の台本では「中央寄せ」を使う場面を思いつきませんから、これをエンドマーク用に使っても良いかなと思います。
もうひとつ、Fountain の Transition を使う手もアリかなと思っています。
Transition をレンダリング (プレビュー) すると右寄せになるので、見た目としては使えます。
> おわり
Transition の基本的な書き方は、「行を TO: で終わる」なのですが、
CUT TO:
‘TO:’ で終わりたくない場合のために、「行を > で始める」という書き方も用意されています。
> 暗転
演劇の台本では Transition は無いか、あってもト書きで書いてしまうことが多いので、これをエンドマークにしても良いでしょう。
仮にそうしたとしても、Transition が使えなくなる訳ではありません。
日本語で書く時のローカルルールと、プレビュー (レンダリング) をどうするかについて、提案します。
なるべく、本家の Fountain フォーマットとして扱っても問題が起きないように考えます。
Title: アンダーコントロール
Author: 沙汰青豆
# 登場人物
# キャスト
characters
など) が来た場合は、その Section を登場人物見出しとする。 # 出る人
= characters
# 登場人物
捨村はじめ (捨村): 保存容器会社の社員
京野ゴロー (京野): 保存容器会社の社員
荻島れん子 (荻島): 捨村たちの先輩
上記は、登場人物見出しの後に登場人物を3個書いた例です。
# 第一幕
## シーン1
### 待合室
## シーン1
舞台中央やや奥めにデスク。左右から座れるようになっている。
上記は、レベル2の柱の後にト書きを書いた例です。
@ピーター
ピザが好きなんです。
セリフは、人物名の行とセリフの行から成ります。
> おわり